睡眠導入剤や睡眠薬について教えてください。

いわゆる睡眠薬は、内科でも外科でも処方されます。患者さんは、薬で眠れるようになるので、最初は助かります。しかしながら、日中のだるさに気づかない場合もあります。夜間よく眠れるので、朝はスッキリ起きられ、良いという場合もあります。しかし、多くのくすりは、日中にも影響が出ます。

半減期

薬は服用するとだいたい30分位で血液中の濃度が最高に上がり、それからだんだんに分解されたり体外に排出されたりしながら、血液中の濃度は下がってきます。このときに、最初の最高濃度から半分まで下がる時間を、血中濃度の半減期と呼んでいます。例えば、よく用いられているゾルピデム(マイスリー)の血中濃度の半減期は、2時間ほどです。したがって、服用した後30分ほどで血中濃度は最高値に達し、その後2時間経つと1/2に、4時間経つと1/4に、6時間経つと1/8に、8時間経つと1/16に減少していきます。

主な睡眠薬の半減期

物質名 (商品名) 半減期(時間)

トリアゾラム(ハルシオン) 2.9

ゾピクロン(アモバン) 3.9

ゾルピデム(マイスリー) 2.2

エスゾピクロン(ルネスタ) 6

エチゾラム(デパス)6.3

ブロチゾラム(レンドルミン) 7

リルマザホン(リスミー) 10.5

フルニトラゼパム(ロヒプノール) 24

エスタゾラム(ユーロジン)24

ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)122

長い半減期の薬物を毎日服用し続けると

たとえば、半減期24時間の薬を毎日飲むと、初日の最高血中濃度を、最低とした血中濃度ので、変動し、薬は24時間いつも血液中に滞在して働き続けることになります。更に半減期の長いものは、もっと長く働き続けます。こうなると、日中も睡眠薬が働き続けるわけです。

多くの患者さんは、「いや、昼間ははっきりしているよ。」とおっしゃいます。しかし、ベンゾジアゼピン受容体作動薬と呼ばれている上記の薬は、脳の働きを低下させることにより眠気を起こさせます。日中は、前の日によく眠れたため、と、体内時計の影響で活動しやすい体の状態が作られているので、眠気はさほど感じないかもしれません。しかし、脳が働いていないことは確かなことです。

依存性もある

これらのベンゾジアゼピン受容体作動薬と呼ばれる薬には、多かれ少なかれ依存性が有ります。これは、脳の報酬系を刺激して、気持ち良い眠りを誘発する働きがあるということです。したがって、患者さんは気持ちよく眠れたと感謝されます。しかし、一方で、気持ち良い眠りを手放したくなくなり、睡眠薬に依存するようになってきます。

新しい睡眠薬

新しい睡眠薬である、ロゼレム(ラメルテオン)や、ベルソムラ(スボレキサント)は、脳の報酬系を刺激することがほぼ無く、依存性は極めて低い睡眠薬であると考えられています。また、最近ではリフレックス・レメロン(ミルタザピン)やその他の眠気を起こさせる薬も使われます。

しかし、一方で、ベンゾジアゼピン受容体作動薬を用いて気持ちよく眠ることに慣れてしまった患者さんは、これらの薬に変更することに非常に拒否的になります。依存して気持ちよく眠れることを手放したくなくなるわけです。このような依存性は、アルコールや有害薬物にみられる依存と同じメカニズムで、非常に厄介です。

適切な薬を必要なときにだけ用いるということの大切さ

したがって、依存性にも配慮しながら、適切な薬を必要なときにだけ用いるということはとても大切です。依存性の少ない薬物を合わせて投与し、ベンゾジアゼピン受容体作動薬を減らしながら薬物に少しずつ置き換えることの意味を丹念に説明し、離脱できるのであれば、薬物から離脱した(やめた)ほうが、良いです。

私の患者さんの言葉を思い出します。「先生、薬をやめてよくわかりました。昼間あたまがはっきりしているというのは、こういう事なんですね。何年もこういう感覚になったことがありませんでした。」と。

不眠があって、薬を使っても、いつも薬はやめていくことを考え、生活から睡眠を改善することも合わせて行うことを忘れずに治療を続けていきましょう。