長く睡眠薬を飲んでいますが、どうしたらやめられるでしょう。

(Last Updated On: 2018年10月1日)

睡眠薬の長期連用の問題

2018年春の診療報酬改定で、1年以上の抗不安薬、睡眠薬の長期処方に制限が加わったことは、このQ&Aの他の項目でも説明しました。これは、日本では他の国に比べて、ベンゾジアゼピン受容体作動薬が、長期に渡って連用されるケースが多いことが挙げられます。ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、生命に対する安全性の高い薬物なので、内科でも、そして精神科でも、気軽に多く使われすぎているということがあります。しかし、連用には問題があります。

長期連用すると以下のような問題が出ます

  • 依存が形成されると、やめることができなくなる。薬が無いと眠れない。
  • 日中頭がボーっとする。特に高齢では、体の外に排出されにくくなりこの傾向が強くなる。
  • 認知症の発症リスクが高まるという報告もある。
  • 夜間を主としたふらつきがあり、転倒骨折の危険が高まる。
  • ベンゾジアゼピン眼症に見られるような、眼科症状も出現する。

諸外国では

これについては、睡眠薬の説明(下記参照)でも述べていますが、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構による平成 29 年 2 月 28 日調査結果報告書があります。ここに書かれているのは、日本では使われすぎているので、使用を適正にするために制限していくべきだということです。この報告書では、諸外国でのガイドラインにも触れています。この報告書の要点は、「日本でのベンゾジアゼピン受容体作動薬の消費量が、他のアジア諸国と比較して高い」ということと、「他国では、期間を2週間から4週間に限って使われている」ので日本でも限定して使うべきだと提言しています。

参照:【睡眠導入剤や睡眠薬について教えてください】

どうしても睡眠薬でも減らさないといけないのでしょうか

この解説のポイントは、どのような場合も睡眠薬を減らさなければいけないということではなく、ある程度睡眠の問題(不眠)が改善したら、睡眠薬を減らすことを考えるほうが良いということと、ベンゾジアゼピン受容体作動薬という種類の睡眠薬は減らしたほうが良いということの二つです。どれがベンゾジアゼピン受容体睡眠薬なのかは、上記の参考に示した解説を御覧ください。

飲んでいたほうが良いというわけではありませんが、ベンゾジアゼピン受容体作動薬以外は、依存性が少なく弊害は少ないと思います。しかし、これらの薬も翌日の眠気が出現することもあり、服用量を最小限にするなどの工夫も必要になってくると思います。

どのようにしてこの薬を減らしていったら良いのでしょうか

多くの睡眠薬は依存性があるので、すぐに服用をやめると眠れなくなります。また、不眠の背景にある要因が解決していなければ、不眠がまた出現してくる可能性もあるので、この点についても評価も必要です。したがって、やめるタイミングは専門家による評価が必要だと思いますが、自分で考えて、「特にストレスもないがやめると眠りにくいので、医者に薬を取りに行っているのが何年も続いている」というような方は、減薬の対象になると思います。

自分でやってみるのが良いかどうかはわかりませんが、自分でやってみてもうまくいくケースはあると思います。一方で、途中で不眠が悪化するケースも無いとは言えないので、専門的なアドバイスのできる主治医をもって減らしていくほうが安全だと思います。

漸減法で減らしていく

漸減法とは、少しずつ減らしていくということです。教科書には、一日置きの服用なども書いてありますが、飲む日と飲まない日の差がでて安定しないので、私は少しずつ減らしていく漸減法が良いと思い、ほぼ常にこれを使って患者さんの指導をしています。

実際の減らし方

減らし方は、非常にゆっくりのペースです。例えば、複数の薬を飲んでいたら、なるべくやめたほうが良い薬をまず選びます。そして、その薬を1錠の8分の1くらい減らします。8分の1ですので、大抵は問題なく眠れます。いつもより少し眠りが浅いなと思う方もいるかも知れませんが、こういうことはチャレンジする不安もありますから、普通は薬を8分の1減らしたから眠れないということはほぼ無いと思います。どうしても不安な場合は、減らした8分の1を枕元に置いておいて、いつでも飲めるようにしておくことをお勧めしています。

8分の1減らすのは、ピルカッターを使うと便利です。ピルカッターは、写真のようなものですが、これは100円均一でも手に入るようです。

8分の1で眠れたとしても、その後すぐに更に減らすということはしません。同じ量を2週から4週くらいのあいだ、続けます。その後、十分に眠っているようなら、更に8分の1減らします。これで、4分の1減らせたことになります。その場合も、眠れれば、これを2週から4週つづけます。その後また同様に減らします。減らして、眠れ ない感じがあれば、もとに戻して更に2週から4週続けることもあります。減量の間隔は、患者さんの状態や来院の間隔などによって柔軟に対応していくのが良いと思います。

このような、ペースで減量がうまく行けば、早ければ4ヶ月位。長くても8ヶ月から1年で一つの薬剤が減らせます。しかし、うまく行かなければさらに時間をかけても良いと思います。諦めずに少しずつ減らすことが大事です。一方で、下記のように、不安の背景についてのメンタルヘルス的ケアが必要な場合はこれも並行することが必要です。

ベンゾジアゼピン以外の薬も併用する

もし、次第に減らすことがうまく行かなければ、他の薬物を併用しながらベンゾジアゼピンを減らしていくことも良いと思います。ベンゾジアゼピン以外の睡眠薬や、睡眠を改善するために用いられる薬は依存性が無いものが多いので、これらの薬を併用しながらベンゾジアゼピンを減量していきます。さらに、併用した薬も必要がなくなればその後減量して、睡眠薬から離脱を果たすことができます。

生活を改善する

すなおクリニックの取り組みとして、最も中核的なことが生活の改善です。座りがちな生活(セデンタリー・ライフスタイル)は、生活習慣病を併発させるだけでなく、気分の低下を引き起こし、睡眠の質を悪化させます。このような状態の中で、薬を変えていっても本質的な問題の解決にはなりません。目指すところが、健康な生活を取り戻すことだということも、考えながら治療を進めていくことが大切です。

メンタルヘルスのケアを同時に行う

いずれの場合も重要なのは、不眠の背景にあるメンタルヘルスの問題があれば、これを考えずに減量するのは好ましくないということです。ときには、まだ減量の時期でない場合もあります。また減量を行うとしても、もし、心配事などがあればそれの解決の糸口を一緒に探していくメンタルケアも行いながら薬物の減量はしていくべきものです。

睡眠薬をやめられて良いこと

睡眠薬は、日中への影響があることも多く、過剰投与になれば頭がボーッとすることも多くあります。ベンゾジアゼピン受容体作動薬から離脱された患者さんは、「頭がモヤッとした感じがないですね。こんなに頭はスッキリしているものなのですね。」と言われるかたもいます。また、日中の活動性があがり、そのために睡眠が改善するということもあります。また、筋肉量が増えて体力が付けば、より活動的で健康的な生活になります。本来大切なのは、このような健康的な生活を取り戻すということです。

睡眠が非常に障害されていれば、薬物療法を行うことは悪いことではありません。しかし、漫然と睡眠薬を使い続ければ、依存が形成されてやめることが難しくなります。これを、辛抱強く減らしていき、より健康的な生活を取り戻したいものです。