メラトニンとは?

(Last Updated On: 2018年8月28日)

メラトニン

メラトニンは、脳の松果体という部位から夜間(午後9時ころから午前9時ころの間に午前2−3時頃をピークとして)分泌される神経ホルモンで、ヒトでは睡眠を安定させたり、生体時計の調整を行ったりする作用をもっています。日本では販売が許可されていせんが、アメリカなどでは、サプリメントとして販売されており、スーパーマーケットのサプリメントコーナーにもおいてあります。以前は、動物から抽出したものものが多かったようですが、最近は植物からの抽出したものも多く出回っています。冒頭の写真の容器のラベルの右下にもVEGETARIANとの記載があります。

メラトニンの睡眠への効果は?

日本では、販売されていないメラトニンですが、睡眠や生体リズムへの効果は科学確認されています。メラトニンは体内のメラトニン受容体という部位に対して働きます。メラトニン受容体には、メラトニン1, 2, 3 (MT1, 2, 3)受容体の3種類があります。MT1と、機能は良くわかっていませんがMT3(文献1)がメラトニンの抗腫瘍作用に関係している可能性があるとも考えられています。また、MT3はメラトニンだけが作用するわけではないという報告もあります(文献2)。

MT1とMT2に対する作用が、睡眠に関連したものです。MT1とMT2の働きは、必ずしも十分に解明されているとは言えません。しかし、メラトニンの睡眠に対する影響は、大きく分けると2つあります。

  1. 睡眠の質を向上させる。寝付きをよくし、中途覚醒を減らし、長く眠れるようになる。
  2. 服用のタイミングによって、早寝早起き(あるいは夜更かし朝寝坊)の傾向に、睡眠を取る時間帯をずらす。

MT1には、1,2両方の働きがあるようです。また、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠がありますが、MT1はレム睡眠に対する、MT2はノンレム睡眠に対する影響があるようです(文献3:図も)。これらの作用を利用して、メラトニンを不眠症治療、睡眠の改善にもちいることが行われます。

不眠症ではどのようにメラトニンを使いますか?

冒頭の写真は、Natrol社から発売されているメラトニンですが、その使用法の写真を示します。

使用法や注意の要点を示すと、以下のようになります

  • 就寝20分前に1錠を服用します。
  • Natrolメラトニン3mgは
    ・正常な睡眠パタンを確立します✝
    ・ビタミンB6も含まれ、これが体内のメラトニン分泌の助けになります✝
    ・100%薬物は含まれておらず、依存性はありません
    メラトニンは、時におこる不眠に対する睡眠補助薬です✝
    (これらのうち、✝がついている表示は、米国FDA(食品医薬品局)の評価は受けていません。この製品は、どのような疾患の診断、治療、予防のためのものではありません。)

このように書かれていますが、主には上記の「睡眠の質を向上させる。寝付きをよくし、中途覚醒を減らし、長く眠れるようになる。」という効果を期待して、服用するように示されています。

一方で、メラトニンには上記の2番めの効果として、体内時計をずらす作用もあります。例えば、夕方4時5時ころに少量(0.5mgから1mg)を服用すると、服用直後に眠気が出るのではなく、通常の眠くなる時間が早くなるという効果を用います。これによって、寝付きの悪い人の寝付きが良くなるということもあります。(寝付きの悪さは、必ずしも睡眠時間帯だけの問題ではありませんので、必ず効果があるわけでもありません。)このような利用法は、体質的には夜型人間だが、早く床に入る習慣がある人などには、より効果が高いと思います。(関連項目: 朝型夜型質問紙とは?)また、この効果をつかって、時差ボケ(ジェットラグ症候群)を軽減させることも行われています。

メラトニンは、クリニックで処方できますか?

前述しましたようにメラトニンは、日本では販売されていません。しかし、日本で認可されていない医薬品でも、医師が厚生局を通じて厚生労働省から薬監証明を取得して合法的に輸入し、日本国内で処方薬として治療に使うことが可能は制度があります(文献4)。メラトニンはアメリカではサプリメントとして使われていますが、日本では神経ホルモン剤として医薬品の扱いになります。

一方、個人で輸入することは可能です。Googleサーチで、メラトニンを探せば、多くのサイトが現れます。冒頭の写真も、私が個人としてiHerbというサイトから購入したものです。

でも購入する前に、チョット待って!

すなおクリニックでも、上記の制度を用いてメラトニンを処方することを考えています。その中で、どの製品が良いのかということを調べていくうちに、昨年アメリカの臨床睡眠医学会の学術誌(Journal of Clinical Sleep Medicine)に掲載されている論文に出会いました。この論文の要旨の抄録の結論の部分を以下に示します。

Melatonin Natural Health Products and Supplements: Presence of Serotonin and Significant Variability of Melatonin Content
メラトニン自然健康プロダクトとサプリメント:セロトニンの混入とメラトニン含有量の非常に大きな変動
Lauren A.E. Erland, MSc, Praveen K. Saxena, PhD

Conclusions:
Melatonin content did not meet label within a 10% margin of the label claim in more than 71% of supplements and an additional 26% were found to contain serotonin. It is important that clinicians and patients have confidence in the quality of supplements used in the treatment of sleep disorders. To address this, manufacturers require increased controls to ensure melatonin supplements meet both their label claim, and also are free from contaminants, such as serotonin.

(今回調べた31製品の)メラトニン製品のうち71%の製品が、ラベルに示されている含有量の10%以内の値を満たしていなかった。更に26%の製品には、セロトニンが含有されていた。(メラトニンはセロトニンから体内で作られ、セロトニンを過剰に服用すると健康被害が出る可能性がある。)臨床医師も患者も、睡眠障害に用いるサプリメントに対する品質について、信頼をおけるということが大切なことである。これを達成するためには、製品を製造する会社は、メラトニンサプリメントの製造において、ラベルに示した含有量の正確性だけでなく、セロトニンのような物質が混入しないということもにより製品管理を厳重に行うことが要求される。

論文を読むと、メラトニンの含有量は、ラベルに示された数字より、83%も低いもの(5分の1以下)から、478%(5倍近い)も多いものまで様々であったと書かれています。残念ながら、この論文には会社名は書かれておらず、どこの製品が良いものなのかはわかりません。

このような状況をみると、すなおクリニックでは「薬監証明を取得して合法的に輸入し、日本国内で処方薬として治療に使う」ことは、更に調査をして、製品の品質についての情報がしっかりと確認できるまではまだ行わないほうが良さそうだと考えています。

私自身は、ずいぶん以前からアメリカに行った時にスーパーマーケットで購入したり、個人で輸入して、使うことも多くありました。したがって、個人輸入して服用しておられる方に、にわかに健康被害が出るというようなことはないとは思います。また、実際、多くの米国人が使用しているので、過剰な心配はいらないと思います。

暫定的な推奨製品について

USP verified productsを選ぶべきであろうと、米国睡眠医学会のメラトニンサプリメントの記事には書かれています。実際に、USP(U.S. Pharmacopeial Convention=米国薬局方協議会)のサイトを見ると、Nature Madeのメラトニンのみがリストされています。他の製品が悪いかどうかはわかりませんが、この製品の品質が保証されていて安心であろうと思われます。

参考資料

  1. Pariente R, Bejarano I, Espino J, Rodríguez AB, Pariente JA.  Participation of MT3 melatonin receptors in the synergistic effect of melatonin on cytotoxic and apoptotic actions evoked by chemotherapeutics.  Cancer Chemother Pharmacol. 2017 Nov;80(5):985-998. doi: 10.1007/s00280-017-3441-3. Epub 2017 Sep 27.
  2. 宮本政臣. 不眠症治療薬と QOL: MT1/MT2 受容体作動薬ラメルテオンの研究開発.  日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)131,16-21(2008)
  3. Jiabei Liu, Shannon J. Clough, Anthony J. Hutchinson, Ekue B. Adamah-Biassi, Marina Popovska-Gorevski, and Margarita L. DubocovichMT1 and MT2   Melatonin Receptors: A Therapeutic Perspective.  Annu Rev Pharmacol Toxicol. 2016; 56: 361–383.
  4. 関東信越厚生局 医薬品等の輸入手続きについて
  5. 厚生労働省 医薬品等の個人輸入に関するQ&A
  6. Lauren A.E. Erland,  Praveen K. Saxena.  Melatonin Natural Health Products and Supplements: Presence of Serotonin and Significant Variability of Melatonin Content.  Journal of Clinical Sleep Medicine, Vol. 13, No. 2, 2017