ムズムズ脚症候群と周期性四肢運動障害

(Last Updated On: 2018年8月15日)

ムズムズ脚症候群と周期性四肢運動障害について

ムズムズ脚症候群(=レストレスレッグス症候群)は、床に入りいざ眠ろうとすると、脚がムズムズして眠れないという疾患です。最近は、ずいぶん名前が知られているようには思いますが、以前は、ずいぶんといろいろな病院を巡って私の睡眠外来にやってこられる方も居ました。「そんなの病気じゃないんじゃないの。」と多くの医師に言われて、一般的な睡眠薬をとうよされるというものです。

症状は、眠ろうと思って布団に入るなど、じっとする状態になると、脚がムズムズして動かさずには居られないような感覚が出てきて、動かすと治まるのですが、またじっとしていると出現するという厄介なものです。人によっては日中、講義や会議でじっとしていたり、こたつに入っている時に出現することもあります。ムズムズの場所も足腰だけでなく、体幹などに出る人もいて、こういう場合は、ムズムズ脚という名前にとらわれていると、診断が遅れる場合があります。

また、寝ている間に足がピクピクと動く「周期性四肢運動障害」は、ムズムズ脚症候群の近縁疾患だと考えられています。下記に、外国から投稿されたYouTubeのビデオを掲載します。来院される患者さんによっては、配偶者が実際に足が動いているところの動画を撮影して、持ってきてくれることがあります。(雑談ですが、最近はスマホで簡単に動画が取れるようになったため、無呼吸などでもその様子を動画にとって持ってこられる患者さんは少なくなく、これは非常に診断の助けになります。)下記の動画のように、眠っている間に足が動くので熟睡できず、日中の眠気が主な症状となることが多くあります。

どのくらいの頻度で?

頻度は、統計にもよりますが人口の5%弱程度であろうと考えられます。欧米の統計では、もっと多いようです。中年以降に多いと考えられ、男性より女性に多いと考えられています。しかし、小児のムズムズ脚症候群と思われるケースもあります。この場合は、ADHD(注意欠如多動性障害)などの他の疾患との鑑別も重要であろうと思われます。

原因は?

原因は、脳におけるA11という部位のドパミンの活動性が低下しているためと考えられています。ドパミンの活動性の低下がなぜ起こるのかはわからないケースが多くありますが、下記のようにドパミンの生成に関わる鉄分不足などを含めた、いくつかの原因によるものも報告されています。

  1. 原因不明の特発性のもの
  2. 鉄欠乏性貧血
  3. 妊娠中
  4. 慢性腎不全(特に透析中)
  5. 胃切除後
  6. 多発神経炎
  7. 脊髄疾患
  8. 葉酸欠乏
  9. ビタミンB欠乏
  10. 向精神薬などの離脱期

病態(やや専門的)

Clemensらの説によれば、図のように脳のドパミン起始核A11の機能が不十分であるため、体からの知覚の脱抑制がおきるということです。(下記に、私が以前行った講演のときに作成したスライドを掲載します。)

治療

治療は、ドパミンの活動を上げる薬物などを用います(プラミペキソール,ロチゴチンパッチ)。また、GABAの活動を上げる薬剤(ガバペンチン エナカルビル,クロナゼパム)なども用います。それぞれの薬物の効果の発現の仕方は、以下の図のとおりです。また、血中のフェリチン値が50ng/mL未満の場合は鉄サプリメントも用います。

すなおクリニックでは、ときにドパミンの働きを上昇させる、川芎茶調散という漢方薬を用いることもあります。

診断と治療によって、安定した日中の生活を

ムズムズ脚症候群や周期性四肢運動障害があると、夜間に十分な睡眠が取れないということで、日中の生活は著しく障害されるも多くあります。このため、イライラが強くなったり、ときに抑うつ状態になることもあります。

しっかりと診断をし、適切な治療によって、安定した日常生活をおくれるように、しっかりと治療をしていきましょう。