概日リズム睡眠・覚醒障害

(Last Updated On: 2022年12月28日)

夜間の適切な時間帯に眠れない

概日リズム睡眠覚醒障害には、後で述べる幾つかのタイプがありますが、どれにも共通した本質的な問題は、夜間の適切な時間帯に眠ることができないということです。また、興味深いのは多くの場合、時間帯は適切でなくても、眠りそのものには問題がなく、環境が良ければ良い睡眠を得ることができるということです。

別の見方をすると、概日リズム睡眠・覚醒障害は体内時計の機能の問題であって、眠りそのものに関わるメカニズムの問題ではないということです。

概日リズム睡眠・覚醒障害のタイプ

睡眠・覚醒相後退障害: 極端な夜型、つまり夜中に起きていて明け方から眠り、学校や仕事が始まる時刻になっても起きることができない問題です。体内時計が実時間と比べて遅れており、明け方が通常の人の眠りにつく22時23時ころに当たります。したがって、朝起きることは夜中の2時3時に起きることになり、無理に起きることをつづけると心身の不調が起きてきます。

睡眠・覚醒相前進障害:上記とは逆に、極端な朝方。もう少し起きていても良い時間帯に眠くなり眠ってしまいます。このような状況は、会社に遅れることがなく、フレックスタイムであれば朝早くから仕事をする社員となるわけですので、むしろ好ましい評価を受けることもあります。一方で、友人などとの夕方移行の楽しみはできず、このことを辛く思いときに抑うつ的となることもあります。

高齢者でもこのような状態は見られますが、夕方近くになると疲れてくる、あるいは他にやることがないということで極端に早くとこに入るケースも有り、純粋な体内時計の問題でない要素があることもあります。

不規則睡眠・覚醒リズム障害:不規則型はその名の通り、不規則に眠くなり眠るタイプです。多く来院される方は、引きこもりがある若年者ですが、神経変性疾患のある方にも認められるとされています。

非24時間睡眠・覚醒リズム障害(ノン24):非常に興味深い病態で、太陽光の影響をうけずに、体内時計のもっている24時間以上の周期によって睡眠が出現するタイプです。実際に睡眠日誌や活動量計で睡眠のパタンを測定すると、きれいに階段のようにずれていくのがわかります。これは、ときに社会的因子によって乱されますが、眠りやすい時間帯にくると夕方から毎日少しずつずれて明け方近くから眠る様子が見られます。

光の影響を感じられない全盲の患者様にもみられます。

交代勤務障害:交代勤務はシフトワークとも呼ばれ、タクシー運転手、警察官、看護師など医療従事者などの仕事では必須の業務体系です。これによって社会が支えられている言ってもよいでしょう。しかし、そのような生活の中で本来眠るべき時間帯に眠れないということが起きてきます。これによって、疲れが十分に取れず、ときに気分の低下が起きることもあります。

時差障害: ジェットラグ症候群とも呼ばれます。急に時差のある地域に移動したときに、体内時計と現地の時間とのギャップが生じて、体調不良を起こすものです。別項目で詳しく説明しています。

治療法は?

治療は、時間生物学的治療を行います。具体的には、メラトニン(神経ホルモン)あるいはその作用のある薬物(ラメルテオン)を用いますが、これは服薬する時刻と量が非常に重要です。これらについては、専門的知識が必要とされます。また、高照度光を用いることもあります。家庭でも高照度光治療がつかえるように、様々な装置が開発されています。

一方で、より重要なポイントですが、背景にある疾患についてしっかりと診断し、総合的に治療していくことも重要です。背景にある疾患は、発達障害による引きこもりや、ゲームによる夜ふかし。またまた、高齢者では孤独による早い時間帯での就床などです。これらを同時に改善していくことが、よりよい生活に結びつきます。