大人の発達障害について

大人の発達障害は子どもの発達障害とどう違うのですか?

発達障害は、子どもから大人になる時の様々な精神機能(脳機能)の発達に問題がある場合に付けられる診断の総称です。したがって、子どもの頃からの様々な変化を通じて、発達障害は診断されるもので、大人になって急に発達障害になるということはありません。

では、なぜ「大人の発達障害」という言葉が使われるようになったのでしょうか。それは、子どもの頃には問題を気づかれなかったが、大人になって社会における苦労が他の人より大きいためにストレスが強いと言うような状況があったり、最近の様々な精神科の研究から大人になっても発達障害の症状があり、社会的に苦労している状況が明らかになり、これに対しての治療法が徐々に確立しつつある中で、メディアによってこのことが多く伝えられるようになったという背景があるように思われます。

尚、当クリニックでは、主には高校生以上の方々で発達の問題がありそうだという方を対象にした治療を行っています。小児思春期に該当する方は、小児思春期精神医学の専門クリニックを受診してください。

では、大人の発達障害の特徴は何ですか?

一概には言えませんが、大人の発達障害は子どもの頃にはさほど問題にならなかったということもあり、一般には子ども頃に気づかれる発達障害よりも軽症であると思います。しかし、患者さんによってその程度や質は様々で、大人になって診断される場合にも非常に苦労しているケースも見受けられます。

発達障害には、大きく分けて、注意欠如多動症、自閉スペクトラム症、学習障害などがありますが、この中で注意欠如多動症では、多動性・衝動性の少ない、注意欠如優勢型が多いようにも思われます。この場合は、不注意な間違い、仕事のやり残りが多いなどの問題が明らかになる場合が多くあります。

また、自閉スペクトラム症でも常同性などよりも、社会的コミュニケーションの問題があり、会社などの職場で同僚とのコミュニケーションがとりにくい、営業関連のしごとが上手く行かないということで顕在化することもあるように思います。

学習障害は、上記の障害とともにあることもありますが、顕著な学習障害の多くは学童期に明らかになり、「大人の発達障害」としては少ないようにも思われます。

発達障害全体については、別項:「発達障害の概念(準備中)」を御覧ください。

大人の発達障害は病気ですか?

発達障害は、私は狭い意味での病気とは言えないと思います。例えば、不注意症状については、明らかに毎日の生活に支障があるほど不注意の度合いの強い人から、まったくと言ってよいほどそういう傾向のない人まで様々な人がいるわけです。図を見ていただくとわかりますが、その場合ある基準でこれより不注意なら病気であるということは非常に困難です。実際に、より不注意でも、仕事や生活環境によっては苦労がない場合もありますし、その逆もあります。

したがって、大人の発達障害を治療するときには、生活で何が困っているのかを丁寧にお聞きして、その中で解決できるものを探していくという作業がもっとも大切です。

どのように診断しますか?

診断は、最も大切なのはこれまでの生活史を丹念に聞いてその傾向があるかどうかを明らかにすることです。したがって、多くの場合初診では30-40分はその時間に費やします。その後に、診断基準に則って診断が可能かどうかを考えます。診断基準としては、DSM-5を用いています。また、更にその特徴を明らかにするためにWAIS-IIIという知能検査を行います。知能検査を行う理由は、知能を測定するだけでなく、知能検査の14個の下位項目のうち、何が得意で何が不得意かを明らかにし、診断と同時に今後の生活を考えていく上での参考にするためです。

どのような治療をするのですか?

いちばん大切なのは、工夫して直せる部分を探し出すことです。例えば、メモをとるとか、あるいはノートを一冊にするとか、朝出かけるときに持っていくものを入れる箱をつくるなどです。また、コミュニケーションの問題があれば、まず天気の話をしてみようなどというような、トレーニングを少しずつしていきます。

これに対して、薬物療法も併用します。注意欠如多動症に対しては、ストラテラ、コンサータなどの薬物療法は効果があります。これだけでも随分と生活が楽になる人が大勢居ます。また、薬物療法によって、上記のような工夫がしやすくなることも多くあります。

更には、長期的な展望では、仕事の種類を考えたり、もし障害が非常に強ければ障害者手帳を取得して、障害者雇用などの働きやすい職場を考えたりもします。

まずは、受診してご相談ください。