現代社会のストレス

ストレスの多い現代社会と、その要因について考えてみます。

社会の要因

現代の生活は1960年代の生活とは様々な点で、著しく異なっています。一番大きな点は、情報化社会となったということです。別の言い方をすれば、インターネットの普及により、いつでもいろいろなことができるようになったということが有ります。これは便利なようですが、人々に大きなストレスを与えています。

いつでも連絡可能

私が、子供の頃はお父さんが一旦家から仕事に出ると、そう簡単に連絡を取ることができませんでした。連絡を取る必要があるとすれば、会社に電話するか、あるいは会社から外に出ている場合には、次に行くであろう場所に電話をして、用があるので家に電話を入れてくれと伝言するかです。しかし、今は誰がどこに居てもすぐにその人に連絡を取ることができます。SF小説で「テレパシー」という概念があって、自分の考えを遠隔にいる人に伝え、その人と交信ができる能力です。現代人は、携帯電話を手に入れてテレパシーの能力を手に入れたと行っても良いでしょう。

情報過多

以前は、何か調べ物をするとすれば、図書館に行って調べました。家には、百科事典があって、それを読んで調べたりもしていました。今、百科事典が居間にある家は殆どないと思います。Wikipedia、Google検索、Yahoo!検索。なんでも使って、いつでもなんでも調べられます。したがって、仕事でこの資料を作って欲しいというときには、月曜日にならないと資料もないし、図書館も空いていないということはできなくなります。勿論、働き方改革などで、しっかりを休みを取ることが推奨され、社会は変わっているように見えます。しかし、一方でビジネスは勝ち負けであり、ゆっくり休んでいたのでは負けてしまうという側面もあります。その結果、時間外労働も増えていきます。これも、現代社会のストレス要因です。

24時間社会

このようなことと合わせて、24時間でビジネスが動いているということもあります。インターネットなどで、地球上のどことも簡単に連絡が取れるようになったのは、素晴らしいことですが、このようなビジネスを動かすために眠ることができなくなってしまいました。仕事が24時間となれば、これを支える人たちも24時間で動かざるを得ません。その結果不規則な睡眠が強いられ、身体的にも精神的にもストレスがかかってきます。

個人の要因

さらには、このような社会環境の変化の中で、これまでであればなんとかやれていた人が、仕事上の困難を抱えることになってくるように思います。この背景には、個人の権利の拡大もあるかもしれません。個人の権利が拡大することは、好ましいことだと思いますが、しかし、一方で、アメリカ社会で訴訟が増えているように、過剰に個人の権利を主張する結果、他の人にストレスを与えることもおきてきます。その中で、控えめなパーソナリティーを持った人は、よりストレスを感じる結果となる可能性もあります。

対人不安

社交不安障害などの診断がなされる患者さんでは、対人接触が多いと不安を抱えることになります。電話対応、コールセンターの仕事では、クレーム処理が主な仕事となることもあります。こういった状況で、ストレスを感じにくい人は仕事を続けることが可能でしょうが、社交不安障害などがあれば、そういったことが行われるオフィスにいるだけで大きな不安を感じるということもあります。

注意障害

発達障害の一つである注意欠如多動症(ADHD)という診断にならないまでも、注意の維持が得意でない人は居ます。1960年代であれば、こなせていた情報量が現代社会では格段に増えています。いままでなら、少しストレスがあるときには休み、土日はどこもお休みなので仕事ができず、十分な回復がなされていた人も、現代社会ではその中で継続した仕事をしていかなければなりません。このような要因をみつけて、治療の対象にすることで、より安定した生活が送れることもあります。

自閉症スペクトラム

自閉症スペクトラム(ASD)は、上記のADHDと同様に、発達障害の一タイプです。当クリニックでは、「発達障害は、狭い意味の病気ではありません」とお話していますが、ASDの傾向があると、職種によっては非常にストレスを感じるものも有ります。例えば、営業職は、相手の表情や感情を読み取りながら、品物をうまく買ってもらえるように話術を駆使しなければなりません。しかし、このような仕事はASDの方には向かないことがほとんどです。したがって、このような場合には仕事を考えることも大事です。

現代社会の特徴を知って、よい生活を手に入れよう

大事なことは、病気を治すだけでなく、その要因となっていることを細かく考えて、少しでもストレスの少ない生活環境を作っていくことです。この中には、まわりを変えるということ(職種を変える・部署を変える・職場の理解を得る)や、自分自身が変わるということも含まれます。自分自身が変わるということには、薬物療法だけでなく、当院で行っている生活行動療法によって、生活上の様々な工夫をすることも含まれます。例えば、運動、睡眠、食事といったことからストレスに強い体をつくること。もしADHDやASDの傾向があるなら、手帳や、人との交流の方法などを具体的に課題として少しずつやってみるということなどです。

個人にあった生活指導を

いちばん大切なのは、その人その人の個別の状況を知り、一緒に何から変えていけるのかを考えることだと思います。これを一緒に考えていきましょう。