ADHD(注意欠如多動症)の日中の眠気

睡眠専門外来を日中の眠気で受診する患者さん達

睡眠専門外来を現在すなおクリニックで行っています。そこには、様々な患者さんが見えます。これまでの臨床経験から日中の眠気で訪れる患者さんを睡眠障害の視点から、発達障害の治療に治療の視点を転換する必要があるケースに多く出会ってきました。いくつかの症例をまとめた例をあげますと、30代の女性が他院の睡眠専門外来で過眠症で治療を受け、ベタナミン(覚醒作用のある、過眠症に用いられる薬剤)を投与されていまし。いまひとつ良くならないというので、睡眠専門外来を変えてみようということで来院されました。よくよく話を聞いてみると、幾つものことをやるとどうしても取りこぼしをしていまう、不注意なミスが多い、仕事を順序立てるのが苦手で、休みの日などはぐったりと一日寝てしまうということでした。またこのような傾向は、子供の頃からあるということもありました。また、別の患者さんも、昼間の眠気で来院されました。この方の場合、遅刻が多い、日中の眠気などから、睡眠相後退症候群(生物時計の障害)と診断されていました。その他にも、小学校高学年から中学生の患者さんで、学校で居眠りが多いということで指摘を受けて来院した人が何人もいます。小さい頃の様子など詳細に聞いてみると、怪我が多い、忘れ物が多いなどということも多くあったようです。

ADHDに多く見られる日中の眠気症状

2012年に講演を聴く機会のあった、Umesh Jain先生(カナダ人でAD/HDが専門家)に、講演後の食事会で話しを聞いてみたことがあります。自分は睡眠が専門というと、彼もADHDの睡眠をやっているといことで、論文を幾つか紹介してくれました。

Sleep and daytime function in adults with attention-deficit/hyperactivity disorder: subtype differences / Yoon-SYR, Jain-UR, Shapiro-CM / Sleep Medicine 14 (2013) 648–655

 この論文は、成人のAD/HDの眠気について質問紙調査したものです。これによると、なんと約85%の患者さんが昼間の眠気や睡眠の質の悪化を訴えています。夜間睡眠については、入眠困難、睡眠の中断、睡眠中の暑さなどです。ADHDにはサブタイプがあって、多動衝動優勢型、不注意優勢型と多動も不注意もある混合型に分けて結果を解析しています。結果として、不注意優勢型の方が、睡眠の問題や日中の眠気が強いようです。また、男女では日中の眠気は不注意優勢型の女性が一番強いようです。

ADHDを生活全体から改善していく 

このように考えると、注意欠如障害のひとの日々の生活の質を向上させるための治療は、注意欠如の症状だけでなく睡眠覚醒を含めて総合的に行うのが良さそうです。夜間睡眠が安定しないという方も多く、ここで、眠剤を投与することが誤りではないかもしれませんが、生活指導として運動などを取り入れながら、生活リズムを整え、夜間睡眠の質を生活から向上させることも大切であるように思われます。

薬物療法でも生活が改善する

薬物療法として、日中の眠気をとるときにメチルフェニデート徐放剤(コンサータ)は有効な場合が多くあります。また、このような患者さんにアトモキセチン(ストラテラ)を投与しても、日中の眠気が取れ、更に夜間睡眠が改善するという感想がよく聞かれます。ストラテラは通常、朝投与しますが、これが夜間睡眠を改善するということは非常に興味深い点です。これは、日中のノルアドレナリン系の機能亢進が、二次的に睡眠のメカニズムに好ましい影響を与えている可能性があるのかもしれません。

まずは正しい診断から

最も重要なことは、正しい診断を行うことであることは、言うまでもありません。睡眠専門外来においても、このような発達障害などの他の障害を見逃す可能性については、十分に注意しておくことも大切であるように思われます。

当院では、睡眠障害で訪れた方も、発達の問題や、抑うつなどで訪れた方も、初診時に十分な問診を行って、どの可能性についても考えながら総合的に診断を行うようにしています。