【一般向け】高齢者の不眠を治そう!

睡眠健康推進機構のパンフレット掲載

高齢者の睡眠の特徴

年をとると睡眠の質が低下してくるということは、よく知られています。年をとっても寝付きはさほど悪くならないのですが、深い睡眠は減少し、中途覚醒が多くなります。また、夜間睡眠時間も短くなると考えられています。高齢者は、夜になると疲れてしまう、やることがないなどの理由で早寝になる傾向もあります。早寝をして睡眠時間が短い結果、早起きになると考えられています。

診察場面で起こりやすい誤解

このような加齢による睡眠の変化は、一般の医師も知っていることではあると思いますが、こういったことを丁寧に患者さんに説明しないと、ときに誤解を招いてしまうことも有ります。患者さんによっては、20代30代のころの睡眠の様子を健康な睡眠だと思っていて、最近は眠りが浅くて夜中にも起きるようになってしまった。テレビでも睡眠が大事だと言われているので、先生に相談してみようと来院される方もいます。そのような場合に、医師がしっかりと情報を提供せずに、眠れないのであれば睡眠薬とすると、年齢相応以上の睡眠を目指して患者さんは報告をするので、睡眠薬の過剰投与が容易に起きてしまいます。

睡眠薬の過剰投与は、日中の眠気、だるさなどを引き起こし、日中の活動性を低下させます。元気であれば、歩いて買い物に出かけて季節の変化を肌で感じ、程よい疲れを感じ、帰宅後、水分補給をしてちょっと休んで、さあ家事の続きをしよう、庭の手入れをしよう、という気持ちになるのですが、それがどうしても必要最小限のことになります。

サルコペニア

高齢者の特徴としては、このような睡眠の特徴だけでなく、筋肉が落ちやすいという特徴もあります。これをサルコペニアと言います。年をとるとホルモン分泌の低下などから、筋肉量を増加させるメカニズムが低下してしまうのが原因です。それでも、日常的に体を動かすことで、筋肉量を保っていくことは可能ですが、睡眠薬の過剰投与で日中のだるさが出れば、身体活動は少なくなってしまい、サルコペニアはどんどん進みます。太ももの筋肉は少なくなり、歩く力も弱くなり、体力も容易に低下します。

不眠と睡眠薬の悪循環

更には、日中も睡眠薬の影響で、ウトウトすることが多くなります。そうすると、昼間眠っているので夜間睡眠の質は更に低下します。夜眠れなければ、このことをまた医師に訴える。医師も、つらそうに訴える患者さんを見て更に睡眠薬を増量する。そして、更にこの悪循環が促進されるという結果になります。

こうなってしまうと、どうしても眠れないという心配が先立ってしまい、薬は手放せない、日中の気分もすぐれない、という状態が慢性化します。身体的な訴えも多くなり、時にはうつ状態となることも有ります。また家族も毎日眠れないという訴えを聞くために、大きなストレスを受けることも有ります。

この悪循環を断ちましょう!

このような悪循環は、早い段階で断っていかなければなかなか抜け出せなくなってしまいます。いちばん大切なことは、医師がこういった悪循環について早い時期に気づき、丁寧な生活指導をすることです。また、患者さん自身は睡眠のことで頭がいっぱいになってしまっている場合もあるので、家族にも丁寧な説明をして、協力を求めることも大切です。

高齢でも筋トレをしよう!

サルコペニアは、これが進行すれば、家の中の歩行が精一杯という状況に容易になってしまいますので、早い段階からこれを回復させる介入がとても大事です。私のクリニックでは、筋力トレーニングの知識もある訪問リハビリマッサージの方と連携して、患者さんの自宅を訪問し、定期的なリハビリと、普段の運動の指導をしてもらっています。スポーツ選手だけでなく、高齢者もこういったアスレティックトレーナがつくことで、筋力アップがはかれるわけです。高齢では、変形性関節炎なども有りますので、これにも気をつけながら、一方では筋力を上げてこのような関節痛の軽快も目指すわけです。

高齢になると傷の治りが遅いように、若いときほど筋肉量がスムーズに増えるということはありません。それでも、以前よりも歩けるようになればこれは大きな喜びです。そして、昼間動けるようになっていくと、次第に夜間睡眠も改善します。高齢だからと言って諦める必要は全くありません。諦めたらそこまでだと思って、急がず休まず良いペースでトレーニングをすることで、生活は確実に改善していきます。諦めず、こうして辛抱強く不眠を治しましょう!